チェンマイの彼女とお話≪九月四日≫ ―壱―午前九時半、まだ、誰も起きてこない。 着替えを済まして、顔を洗って外に出る。 部屋の前は片側の外部廊下になっていて、手すりがついている。 そこからは、ハウスの中庭が真下に見える。 前方にはハウスのゲート、そして道路とお堀が見えている。 家族用の建物の横には、皆が座れる丸いテーブルが置いてあ り、そのテーブルにデーンがいた。 今日も暑くなりそうだ。 俺 「デーン!おはよう!」 声をかけるが、何か不機嫌そうだ。 テーブルに近づきもう一度声をかける。 俺 「おはよう!」 デーンの腰掛けている真向かいに座る。 こんなに身近に、向かい合ってゆっくりと話するのは始めてである。 デーン「昨日の夜、あなた遅かった。何処へ行ってたの か?」 どうやら、やきもちを焼いているようだ。 そう思うと嬉しくなってくる。 デーンはニックネーム。 ”Dang”と書く。 クリスチャンネームなのか、中国名なのか分からない。 ”Dang”とはタイ語で、”赤”を意味するらしい。 俺 「ちょっと、友達とブラブラしてただけだよ。」 デーン「でも、遅かった!」 俺 「夜も蒸し暑いから、食事したり、夕涼みあいてた んだよ。」 デーン「本当に?」 俺 「ああ!」 俺 「ねー!正式な名前、教えてよ。」 メモ用紙に書いてくれる。 ≪Benjaporn Pantaranoon(ベンジャポーン・パンタラ ヌーン)≫ タイ語で書いてくれたのだが、なんて書いているのか分からな いので、英語で書き直してもらった。 ≪住所:Poung Keo Guest House NO109、Mool Muang Road,Chieng Mai、Thailand≫ 俺 「学生なの?」 デーン「チェンマイ大学の学生よ。夜学なの。」 俺 「昼間ハウスの手伝いしてるんだ。」 デーン「そう、時々ね。」 俺 「いくつなの?」 デーン「十八ね。あなたは?」 俺 「二十四。」 デーン「学生?」 俺 「働いていたけど、旅行に出るから辞めちゃっ た。」 デーン「ふ~ん!」 俺 「卒業はいつ?」 デーン「来年一年間通うと・・・卒業かな。」 俺 「その後は・・・・どうするの?」 デーン「ここにいると思うわ。」 俺 「日本には来ないの?」 デーン「うん、行きたいけどお金がないし、夢だわ!だって バンコックだって行けるかどうかわかんないの に・・・・外国なんて。」 俺 「休みは?」 デーン「夏休みが、二月・三月・四月の三ヶ月で、夏休みが 終ると五月から学校が始まるの・・・後、八月から九 月にかけて10日間と、十二月から一月にかけて二ヶ月 の休みがあるかな。」 俺 「スッゲーナ!一年の半分が休みじゃない、羨ましい な。」 デーン「日本はどうなの?」 俺 「一年で3~4ヶ月くらいだな。そんなに休みがある なら、日本においでよ!」 デーン「ハウスの手伝いしなきゃなんないから無理ね。」 俺 「そうか・・・・。彼氏はいるの?」 デーン「いないよ!!」 顔が赤くなっている。 今日一日、デーンとの楽しいお話が続いた。 楽しいチェンマイになりそうだ。 そんな予感がする。 |